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狗奴国の考古学「弥生時代の鉄器は熊本がNo.1」

狗奴国の考古学「弥生時代の鉄器は熊本がNo.1」

熊本地方は北部の一部を除いて、「稲作文化の及ばない停滞した地域」という認識がなされており、九州南部に住む人々は「熊襲(クマソ)」と呼ばれ、ヤマト王権に抵抗した(皇室に逆らった)部族であるというイメージがありました。

しかし近年の発掘調査などにより、弥生時代には九州の中央に位置する地理的特性を生かして、各地との交流がさかんに行われたことがわかてきました。また、北部九州とは趣を異にした独特で個性的な弥生文化を生み出し、邪馬台国論争においても卑弥呼と敵対した「狗奴国(くなこく)」の有力な候補地となっています。狗奴国は女王に服属せずと魏志倭人伝に記録が残っており、邪馬台国論争のカギを握っていると言っても過言ではないでしょう。(邪馬台国「畿内説か九州説か」

伊都国歴史博物館にて、平成26年10月7日(火)~11月24日(月)の期間に、開館10周年記念特別展「狗奴浪漫 ~熊本・阿蘇の弥生文化~」が開催されました。

~以下引用「博物館の開館10周年を記念して、邪馬台国論争において卑弥呼の仇敵だったとされる狗奴国の候補地、熊本・阿蘇地方の弥生文化をとりあげ、熊本県を中心に100点余り(国指定重要文化財1件14点、熊本県指定重要與文化財3点を含む)の資料を借りて展示する。北部九州にはみられない特殊な土器や土偶、北部九州とは異なる青銅器の品々を展示し、「狗奴国=熊本県地方説」を検証する。」

「狗奴浪漫 ~熊本・阿蘇の弥生文化~」特別講演会

狗奴国の考古学「講師:関西外国語大学教授 佐古和枝氏」

北部九州と比べ、山が多く(火山灰地)、ヤマト政権の象徴である稲作文化が浸透しなかった。
熊本県の白川のラインあたりまでは北部九州の文化が入ってきたりしている。

人吉は山の間にぽっかりと平野が開けている。宮崎は瀬戸内海の文化とのつながりも多い。
クナ=クマ=肥後国球磨郡と変化したのでは?

ここ数年で、熊本の弥生時代の遺跡の発掘がすすみ、新しい成果がでている。
初期の青銅器生産を行っている地域は朝鮮系の土器が多く出土。ジャパナイズ(土着化)したものも。

渡来集団と青銅器生産
「講演会資料」

熊本でも白河下流域など朝鮮系の移民が定住した地域で青銅器の鋳型が出土している。
佐賀平野が生産の中心で、福岡平野周辺で利用された。福岡平野では青銅器の鋳型はあまり出土せず、青銅器の消費地であったことがうかがえる。

阿蘇に弥生の大規模集落、鉄器の製造?

従来の考古学の認識「稲作文化の及ばない停滞した地域」と考えられていたが、実際には、鉄の加工(生産ではない)の跡が多くあり、重要な役割を担っていた地域であった。鉄の素材は朝鮮から運ばれてきたと考えられ、いわゆる鍛冶屋さんの仕事をしていたとみられる。

阿蘇谷の弥生後期集落と鉄器出土
「狗奴国浪漫 p19」

2002年の調査によると、鉄器の出土数は、熊本(1890)、福岡(1740)、鳥取(1000以上)
奈良は多く見ても13点くらいと少ない。

鉄器の出土分布
「川越哲志氏 弥生時代鉄器総覧 2000年」

おそらく2015年の時点では熊本がさらに増えているのではないだろうか。こうした点からみると、ヒミコの邪馬台国を脅かした「狗奴国」は熊本周辺にあったのではないか。

阿蘇では製鉄や赤色顔料(ベンガラ)の生産が盛んであった。褐鉄鉱リモナイトを熱するとベンガラになる。北部九州では墓に入れたりするが、使わなくなった住居にまいたり、墓にいれたり、土器に塗ったりしていた。

菊池川流域、球磨地方

菊池川流域の遺跡から、ゴホウラ貝などが出土しており、沖縄などと、北部九州の交易の仲介役をしていた可能性もある。沖縄、種子島、奄美大島では、熊本平野、球磨地方で流行した、免田式土器、ジョッキ型土器が見つかっている。

弥生時代の九州の交易図
「狗奴国浪漫 p31」

才園古墳(6世紀:球磨郡あさぎり町)から、鍍金(金メッキ)した鏡が出土。(装飾された馬具なども出土)
中国の鏡の研究者である王士倫氏によると、三国志時代(3世紀)に中国の江南地方でつくられたもの。(呉の領域)
鍍金鏡(トキンキョウ)は中国でもたいへん貴重なもので、日本では3枚しか出土していない。(一貴山銚子塚古墳:福岡県糸島市、城塚古墳:岐阜県三野)

中国で3世紀につくられたものが、中国国内で伝世した後、球磨郡にきたのか、それとも3世紀ごろに球磨郡にやってきて、伝世したのか。

邪馬台国–魏
狗奴国–呉

というつながりがあり、対抗していたと考えると面白いが、証拠はみつけられていない。

ようこそ考古学の世界へ佐古 和枝 (著) 
身近なところから、気軽に考古学に親しめる入門書。遺跡はなぜ埋まる? 日本人はどこから来た? 卑弥呼がもらった鏡とは? など、古代へタイムスリップ。『読売新聞』大阪本社版連載をまとめる。
邪馬台国と狗奴国と鉄
菊池 秀夫 (著) 1958年(昭和33年)生まれ。神奈川県出身、在住。成蹊大学法学部政治学科卒業後、ゼネコンに就職。1990年に広告代理店に転職。2004年から地域活性化のプランを企画するようになり、九州の歴史や地理を研究。一般の人にもわかりやすい歴史を視点にした新しいジャンルの本を執筆。一級土木施工管理技師。「九州の歴史と文化を楽しむ会」会長
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